そもそも会社設立が必要か、自営業との違いは?

必ずしも事業の立ち上げ当初から会社を立ち上げる必要はなく、最初は個人事業で始めて事業の拡大にあわせて法人化をするのが一般的な方法です。消費税の免税の点からもこのやり方が合理的といえます。

ただし、注意をしていただきたいのは、不動産業のように、役所の営業許可が必要となる商売は、初めから会社を立ち上げたほうがよいことが多いということです。

なぜならば、事業を法人化する場合には改めて法人で新規で営業許可を受けなければならないことが多く、また、場合によっては個人の営業許可を返納した上で、新設法人で許可を取り直さなければならないこともあるからです。

また、こうした営業許可は相続が認められないこともあります。仮に相続が認められる場合であっても、事業主が生存中であれば後継者に許可を引き継ぐことができないことがほとんどです。

こうしたことから、営業許可が必要な事業を始める場合は、初めから法人を立ち上げたうえで、営業許可を受けたほうがよい場合が多いです。

会社設立のデメリット

もっとも事業を法人化すると、原則的に厚生年金に加入しなければなりません。(もっとも、加入していない会社も少なくありません。)個人事業なら国民年金なので掛金が安いですから、場合によっては個人事業のほうがコストが安いということもあります。

また、法人の決算報告は複雑で、少なくとも決算だけは税理士に依頼する企業がほとんどではないでしょうか。

さらに、役員報酬は原則的に1年間変えられない決まりになっています。役員報酬額を増額した場合は、増額分は事業の損金として認められないので、税金の支払い上は不利になります。

株式会社と合同会社

合同会社は公証役場の定款認証の手続きが不要ですから、安く会社を立ち上げることができるメリットがあります。

もっとも、合同会社は株式会社に比べて社会的な認知度が低く、信頼度が低いと判断されてしまうこともあるようです。不動産業を営むのに会社を立ち上げる理由のひとつには、取引相手からの信用確保もあるはずです。ですから、株式会社を選択した方が、無難な選択とも考えられます。

もっとも、運用コストが高い株式会社に比べて、規制の緩い合同会社のメリットは見逃せません。実態が家族経営であったり、既に特定の安定した取引先がある場合など、広く社会一般の信用が求められない場合であれば、合同会社であっても困ることはないでしょう。

会社の設立手続きについて

インターネットの情報や各種書籍を活用すれば、比較的簡単に株式会社や合同会社を立ち上げることができます。

もっとも、定款を紙で作成すると、4万円の収入印紙代が別にかかることから、この部分だけを代行業者に依頼して会社を立ち上げる方も多いです。インターネットを探せば、手数料1万円以下で代行してくれるところがたくさん見つかります。

ただし、低価格の業者の場合は、あらかじめ決められた雛形を利用することが多く、自社にあわせた定款を作ることはできないことがあります。

定款にオリジナルの要素を求める場合は、司法書士に会社の設立を依頼したほうがよさそうです。

ゼロ円設立をうたう代行業者の注意点

最近、会社設立後に税務顧問契約を結ぶことを条件として、完全無料で会社を立ち上げるサービスを提供する業者を目にすることが多くなりました。

とにかく初期費用を安く抑える点ではうれしいサービスですが、設立後に高額な税務顧問契約を結ばなければならないデメリットもあります。こうした無料サービスにはその後の利益回収を前提としているサービスですから、付加的なサービスの内容を確認した上で、こうしたサービスを利用しましょう。特に顧問契約の料金と契約期間、印鑑作成代などが確認のポイントです。

不動産会社設立登記の際に注意すること

資本金について

設立時の資本金を1,000万円以上にしてしまうと、設立後2年間の消費税納税の猶予が受けられません。特にこだわりがなければ設立時の資本金は1,000万円未満にしておくのが無難です。

もっとも、設立時の資本金は宅建業免許を受けた場合にインタネット上で公開されます情報ですから、ある程度の金額を積んでおいたほうが見栄えはすると思います。

設立日

設立日は毎月1日以外にすると、設立初年度の均等割が6,000円弱節約できます。

商号・会社名

地方公共団体、公的機関、指定流通機構と混同しやすい名称は使用禁止です。

使用禁止ワードの例

○○公社、○○協会○○流通機構、○○流通機構、○○流通センター、○○不動産センター、○○住宅センター、○○情報センター

インターネットを活用した営業をする予定の場合は、検索キーワードを意識した会社名にするのもひとつの方法です。

また、近隣に全く同じ称号の宅建業者がある場合は、審査の際に問題とされるケースもあるようですが、少なくとも同じ番地でなければそれほど神経質になる必要はないと考えられます。

本店の所在地

宅建業免許をとる場合は、本店所在地は必ず宅建業免許の事務所になります。

免許申請の際は事務所が確保してあることが条件になりますから、本店は必ず一部屋を事務所として使用する形で登録する必要があります。

また、不動産賃貸の仲介をメインに営業する予定の場合は、事務所の立地が集客のポイントになります。

目的欄の記載

不動産業を営む場合には、定款の目的に「不動産の売買、賃貸及びその仲介」と記載しておけば、宅地建物取引業免許申請の審査は問題なく通ります。

後は、必要に応じてこれから行う予定の事業を漏れなく記載すればよいでしょう。

一般的には、上記の宅地建物取引業のほか、「不動産の管理業」、「不動産の賃貸業」、「内装工事業」、「建築業」、「保険の仲介業」を追加しておくことが多いです。

会社設立後に必ずやっておくこと

会社設立後、一定の期日までに済ませておかなければならない役所の手続きがいくつかあります。

その中でも、税務署・市役所・都道府県税事務所の設立手続きと、青色申告の手続きは必ずやっておきましょう。この青色申告の手続きを忘れると、損失を最大9年間繰り越せるメリットが受けられなくなるので、忘れずに手続きをしましょう。

銀行口座の開設を断られる?

最近、個人・法人の銀行口座が転売された上で、犯罪に利用されることが多くなっています。

こうしたことから、昔は簡単に作ることができた銀行口座が、特に大都市中心部の都市銀行で気軽につくれないことが多くなってきました。

特に新設法人の場合は、税務署に提出した法人開設届の控え(税務署の受付印のあるもの)のほか、代表者の直近3年間分の源泉徴収票のコピーの提出が求められるケースも目にします。

また、不動産業の場合には、銀行の窓口で、「口座を開設するのにも宅建業免許証の提示が必要」といわれて、大変困ることがあります。

1つの銀行で口座開設を断られた場合であっても、あきらめずに、ほかの銀行に足を運びましょう。特に信用金庫などでは案外すんなりと口座開設できることが多いようです。