宅建業免許を自宅で取得することの可否

宅建業を営むにあたり、事務所(店舗)を新たに借りずに、自宅兼事務所で宅建業を開業されることは、一定の条件を満たすことができれば可能です。

また、東京都のケースでは、一定の条件をクリアすればレンタルオフィスでの開業も認められます。

事務所が一定の条件を満たすか否かは、おおむね以下の基準により判断されます。

  • 継続的な営業が可能な施設であること
  • 個人の生活部分から独立していること
  • 他業者から独立していること

すなわち、賃貸期間が1年に満たないような物件であったり、仮設住宅のような容易に撤去が可能な物件は営業所としては認められません。

また、家の間取りによりどうしても事務所として認められないケースもございますので、事前の確認が必須です。

東京都ではレンタルオフィスでの開業が認められておりますが、その場合であっても間取りには注意が必要です。例えば、他社とフロア全体を共有して間仕切りがないレンタルオフィスでは、宅建業の開業は認められません。

事務所の形態について

宅建業の事務所は、機能的にも、物理的にも、事務所として認識しうる程度の独立性を確保しなければならないとされています。

具体的には、事務所の出入り口が確保されていること、事務所以外の区域とパーティション等で区切られていること、事務所としての設備を有すること等の要件を満たす必要があります。


特に、自宅の一部を利用して事務所にする場合は、役所の手引きを読む限りでは、自宅と事務所の出入口を兼用すことはできず、事務所専用の出入口を設けなければならないとされています。

もっとも多くの自治体では、玄関は一つでも各部屋の入口が分かれていれば、自宅兼事務所としての使用を認められております。

ただし、その場合であっても部屋の一部を事務所とすることはできず。壁や天井までで完全に間仕切りされたパーティション(東京都では180センチ以上のパーティション)によって区切られたスペースを事務所として用意しなければなりません。したがって、ワンルームマンション等を自宅兼事務所として使用することは困難と考えられます。

さらに、マンションや賃貸物件を事務所とする場合には、マンション管理規約に営業利用が認められているか、大家の許可が得られているかなどをしっかりと確認する必要があります。

こうした規約に該当するかいないかは、書面で確認することまでは要求しない自治体が多いようですが、その場合であってもUR・都営住宅等では通常承諾を得ることはできないため、申請を受け付けてもらえないケースがほとんどのようです。

以上のように、宅建業の事務所として認められるか否かは、個別具体的なケースにより異なります。
役所との入念な事前調整が必要になりますので、もし、事務所の形態のことでお困りでしたら、当事務所にご相談ください。

さらに、自宅兼事務所の場合であっても、電話番号はきちんと別々のものを用意しなければなりません(事務所の電話番号を携帯電話の番号とすることは認められません)。

行政庁での事務所の審査


宅建業免許の審査において、事務所の要件は比較的厳密に審査されます。

事務所は物理的に宅建業の業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所として認識しうる程度の独立性が確保される必要があります。

そして、事務所には専任の取引任者を設置し、さらに事務所の数に応じて営業保証金を供託しなければなりません。

宅地建物取引業法では、次の2つは事務所であるとされています。

【本店・支店】
登記事項証明書の記載上、本店・支店として登記されている場所は、宅建業の「事務所」とされます。
したがって、少なくとも登記簿上の本店は必ず宅建業の事務所となります。

【宅建業に関する契約を締結する権限を有する使用人を置く場所】

登記簿上の本店・支店以外の場所であっても、宅建業に関する契約締結権を有する使用人がいる場所は「事務所」として扱われます。

商談ルームは宅建業の事務所に該当するか

単に物件を紹介するだけで契約締結行為を行わない、「商談ルーム」であれば宅建業の事務所には該当しないので、他県にこうした商談ルームを置く場合であっても大事免許はいらないのではというお問い合わせをいただくことがあります。

しかし、契約締結自体を行わない場合であっても、契約締結行為を広く解釈されて摘発の対象となることも十分に考えられ、実際に行政庁から警告をもらったという話も聞かれます。ですから、こうした「商談ルーム」の設置を検討する場合は事前行政庁によく相談して決めましょう。