宅建業免許の譲渡について
宅地建物取引業免許の更新回数を示す数字は、長く不動産業を営んできた歴史と信頼を証明する大変重要なものといえます。
こうしたことから、「宅建業免許を相続や譲渡により引き継ぎたいがどうすればよいか?」というお問い合わせをいただくことがございます。
しかし、現在の宅地建物取引業法においては、こうした免許の譲渡・引き継ぎは認められていないのが現状です。
個人免許の承継
個人免許は当該個人に対して一身専属的に付与されるものなので、通常の財産と違い譲渡や相続の対象にはなりません。 したがって、免許取得者である親の死亡の場合はその時点で宅建業免許は失効し、仮に子が親の営業を引き継ぐ場合であっても、新たに免許を取得しなければなりません。
また、営業を他人に引き継いでもらう場合も同様に、事業を引き受けた方が新たに免許を所得する必要があります。
法人免許の承継
法人の合併の場合であっても、消滅法人の免許を存続法人に承継させることはできません。存続法人が従前から宅建業免許を有していない場合には、あらたに免許を取り直す必要があります。
また、法人の事業譲渡の場合も同様で、事業を譲り受けた法人は新たに宅建業免許を取得する必要があります。
このように、宅建業免許を他の事業と切り離して譲渡することができないため、旧会社の株式を譲渡先に全部引き継いで、新たに役員変更、専任の取引主任者の変更を行っていくしかありません。
しかしながら、こうした役員全員の入れ替え・株主全員の入れ替えによる免許の実質的な譲渡は、過去不正な免許取得の手段として利用されてきた手段でもあります。役員の入れ替えに名を借りた実質的には名義貸し行為に該当しないかなど、行政庁において審査の対象とされます。
従来の営業を別会社(別事業主)が引き継ぐ方法
免許の引き継ぎはあきらめるとしても、従来の顧客と事務所等の設備を事業主体に引き継がせる方法により事業を承継することについても、やや煩雑な手続きが必要です。
なぜならば、すでに宅建業免許を取得している事務所においてほかの法人(個人)が新たに宅建業免許を取得するためには、事務所に間仕切りをしたうえで、2つの事業主体の事務所を完全に分けた状態で新会社の宅建業免許を申請しなければならないからです。
こうした間仕切りを設置することは物理的にはやればできるとは思いますが、旧事業主体については営業をしばらく続けることになりますので、事業の継続の点から大変不都合が生じます。
したがって、もっとも現実的な方法としては、いったん新会社は同一都道府県内の別事務所で宅建業免許を取得して、供託手続きをして宅建業免許証が発行された後に、更に事務所の移転手続きをして従来の事務所に移転する方法が考えられます。