新規開業の必要経費+半年間の生活費を確保

不動産業(宅建業)は宅建業免許がなければ開業できませんから、株式会社の設立→宅建業免許申請→保証協会の手続き費用がかかります。そしてこうした手続きには2~3か月はかかりますが、その間不動産業に関しては営業行為を行うことはできませんので収益を上げることは原則的にできませんし、その間のご自身の生活資金や事務所費用等の固定費もかかります。

不動産業は個人事業で始めることもできますから、万が一事業に失敗した場合に、事業を譲渡して少しでも資金を回収する道を確保するために、宅建業免許は法人で取得するのが基本です。

また、これは人にもよりますが、開業半年から1年間は思うように売り上げを上げることができないケースも多々ありますから、最初の半年間分の生活資金を確保したうえで開業するのがおすすめです。

実際運転資金をいくら確保すればよいのか、あくまで一例ではございますが、ご自身の事業計画作成の一材料として、以下をご参考にしてみてはいかがでしょうか?

手続きにかかる費用

会社設立から宅建業免許取得までの手続きには以下のようなものがあります。

  1. 定款認証+株式会社設立登記:25万円程度
  2. 税務署への設立届:手数料0円
  3. 社会保険の加入手続き:手数料0円
  4. 宅建業免許申請:手数料3万3千円
  5. 保証協会の入会手続き:初年度費用150万円~180万円前後

上記はすべて自分で手続きをした場合の費用ですから、代行業者を利用する場合はその分の代行費用が加算されます。

上記の手続きはすべて自分で行うことも可能ですが、営業の開始を急ぐ場合には、やはり代行業者に依頼をするのが近道といえます。

事務所の家賃

特に賃貸仲介業を行う場合には、人通りの多い通りに面した物件の1階に店舗を置くこと自体がお店の宣伝につながりますし、店舗の場所や見栄えは信用の担保になります。

こうしたことから、特に賃貸仲介をする場合には、駅から徒歩5分で人通りの多い交差点あたりの1階に店舗を確保したいところではないでしょうか?

もっとも、開業時の必要経費は極力抑えたいので、月の家賃は10万円前後(敷金・礼金として別途50万円)を目標とすると、都心部の駅近くでこうした物件を借りるのは確かに困難です。しかし、都市近郊や地方の県庁所在地、中規模都市であればよい物件もあるのではないでしょうか?必要なのは立地と店舗全体の雰囲気であって、広さは二の次ですから、ここは是非頑張って良い物件を探しましょう。

そして、ぜひ実際に現地に足を運んで、競合店舗の確認をしていただき、店舗の店構えや看板・のぼりの立て方をチェックして、良いと思われるところは遠慮なく取り入れていきましょう。

内装工事

お店の見栄えは集客に影響しますので、部屋の内装はある程度お金をかけてもよいポイントです。

工事の坪単価は資材の材質により大きく異なりますが、一般的な店舗では10坪で100万円~150万円かけてもおかしくはありません。ただ、簡単なパーティションに少しきれいな応接セットがあれば事務所としての機能は十分果たせますので、スタートアップ時の内装費用はもう少し抑える考え方もあります。

工事については、大手の業者に発注する必要はありません。結局、実際に工事を行うのは下請けの内装工事業者ですので。

むしろ、地元の内装業者をまわって、気の合う人を探してみるのが今後のためによいかもしれません。

事務所の設備

コピー機や電話機は中古でよいのですが、パソコンは古いものは性能も低いので、最新のものを安く用意したほうがよいでしょう。オフィスソフトは必須ですから、別にソフトを買うか、プリインストールされたものが必要です。

  • コピー機(中古):メンテナンス契約込み初期費用15万円前後
  • 電話機(中古ビジネスフォン3台):設置工事込みで15万円弱
  • パソコン(新品3台):21万円前後
  • 事務所内LAN構築・インターネット接続設定:10万円~

広告宣伝費

当たり前のことではありますが、お店を構えただけではお客さんを集めることはできません。そこで、広告宣伝戦略はとても重要です。

HOME’Sやアットホームなどの物件情報サービス

大手の物件情報サービスがたくさんありますが、今から賃貸仲介業を営む場合にはこうしたサービスの利用は必須です。

集客の効果を実感するためには、月5~10万円の投資が必要なようです。

お店のホームページ

自社ホームページの物件情報を掲載してそこから直接集客できればよいのですが、大手の会社が運営する物件情報サイトが幅を利かせているのが現状です。特に開業当初は、初めから高度な検索機能を備えたホームページを用意する必要はないかもしれません。

もしあなたが自社のホームページを営業に活用しようとお考えであれば、自社ホームページはもちろん、ブログ等のSNSを利用して、繰り返し(最初は反響がまったくなくても)情報発信をし続けることが必要です。

インターネットを活用して集客していらっしゃる不動産業者の方を見ていると、自社ホームページ、ブログに写真や図面、ユーチューブを活用して多くの情報を日々発信し続けるとともに、契約済みの物件については削除をするなど手間暇をかけて日々日々運用しています。

まずは初年度費用10~20万円程度のホームページを用意して、事業の発展に合わせてそこから発展させていくのが良いかもしれません。

ポスティング

ポスティング代行を利用する場合、印刷費用のほか1枚4~5円程度のポスティング費用がかかります。

人件費

賃貸仲介業ではお店を開けることはできませんから、社長が自ら営業に出るのであれば事務や物件情報を管理する従業員が最低一人は必要です。

時給900円から1000円で1日7時間、雇用保険や労災も含めて1日8,000円として、最低でも月16万円は必要経費考えましょう。

その他の経費

通信費、水道光熱費で5~6万円、交通費で5~6万円、大目に見積もって合計12万円前後はみておくと無難です。

開業後半年間の必要経費まとめ

上記の例から考えると、不動産業の開業のスタートには、開業後半年間の必要経費として、おおむね720万円、さらにご自身の半年間分の生活資金として150万円程度を確保したうえで独立するのが堅実な方法ではないでしょうか?

もっとも、これは単なる一例にすぎません。この半分程度の資金をスタートアップとして成功される方ももちろんいらっしゃいます。ですから、上記の数字はご自身の事業計画のアレンジの一つの材料として、ご自身のリアルな事業計画を練り上げてください。

なお、上記のすべてを自己資金でまかなう必要はありません。開業時に必要となる資金のうち3分の1~半額程度を自己資金で用意して、残りは金融機関から融資を受けるのが一般的です。