宅建業免許を取得するためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。宅建業免許の取得するための必要となる条件についてまとめました。

供託金・保証金の確保

宅建業者は1000万円を供託するか、あるいは宅建業協会・全日本不動産協会に加入して60万円の保証金を納めなければ営業をすることができません。

協会に加入する場合は、保証金のほかに入会金等も納めなければならないため、協会入会にかかるの初年度費用は150~180万円程度見積もっておきましょう。

定款・登記簿の目的欄の記載

役所で営業許可受ける場合には、会社の定款と登記簿の目的欄に、その許可に関係する記載をするように指示される場合があります。役所の窓口にその理由を聞くと、法人は定款で定めた目的の範囲内で活動するのだから、きちんと営業に関する記載をしなければならないであるとか、営業の意思を確認するため、という回答が返ってきます。

もっとも、目的に書いていない事業であってもその営業行為が無効になるわけではありませんし、法人の目的の記載は広く解釈するのが一般的ですから、目的の記載に宅建業免許の記載がない場合であっても、免許申請を受け付けてくれる自治体もあります。

たとえば、東京都では宅建業免許を取得する理由書をつければ免許申請を受け付けてもらえます。

もっとも、不動産業は信用第一の商売ということもあり、免許を取った後のことを考慮に入れて、目的欄に不動産業に関する記載を追加してから宅建業免許申請をするのが一般的のようです。

不動産業者の登記の目的欄の記載例

○「宅地建物取引業」

○「不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介」

×「不動産の賃貸」(※)

※不動産の賃貸業は宅建業免許がなくてもできますので、不動産の賃貸の記載だけでは足りません。

事務所の設置

宅建業免許を受けて不動産業を始めるには、必ず事務所が必要となります。

事務所として使用できるためには、いくつかの条件があります。

事務所の条件

  1. 一定期間継続的に使用できること
  2. ほかの会社や自宅の居住部分から独立した構造であること
  3. 事務所として使用できる設備を備えていること

1.一定期間継続的に使用できること

この条件は例えばレンタルオフィスでの開業の際に問題になります。

東京都では、レンタルオフィスであっても、部屋が180センチ以上のパーティションで区切られている場合であれば宅建業の事務所として使用することを認めています。ただし、他県では認められないこともありますので、あらかじめ調査をしておきましょう。

また、建築確認が取れない一時的な仮設物件では許可が取れません。

2.ほかの会社や自宅の居住部分から独立した構造であること

この条件は、主に自宅営業の場合に問題になります。例えば、玄関から入って廊下を通り、居住部分として使用する部屋を通らずに直接事務所へたどり着ける構造であれば、自宅であっても宅建業の事務所として使用できる可能性が高まります。

ただし、事務所として使用する部屋と居住部分の部屋との間に通り抜け可能なドアがある場合には、独立性が認められないのが一般的です。

また、ほかの法人と部屋を共同で使用する場合にも、自宅兼事務所と同様の考え方で独立性の有無が判断されます。

3.事務所としての設備を備えていること

最低限次の設備が必要です。

宅建業免許を受けるために最低限必要となる設備

  • 事務デスク
  • 応接用テーブルとイスのセット
  • 固定電話
  • ポスト
  • テナント表示(ドア・ポストに明記する必要があります。)

また、宅建業を営む場合は帳簿の備付義務があることから、書庫があることが望ましいといえます。(都道府県の判断により異なるかもしれませんが、必ずしも必須の設備ではありません)

法人の本店=宅建業の主たる営業所

法人の場合には、登記上の本店が主たる事務所となります。

まれに、本店で宅建業の営業をせず、支店のみで宅建業を営業したいとおっしゃるお客様がいらっしゃいます。例えば、本店は社長の自宅で、支店で店舗を構える場合や、地方に本店があり、東京都だけで宅建業を営みたいという場合があります。

しかし、前述のとおり、本店は必ず宅建業の事務所になりますから、本店と支店の両方で営業保証金の供託をして、専任の宅建取引主任者を配置しなければなりません。

専任の宅地建物取引主任者の配置

宅建業の事務所には、宅建業に従事する者5名に1名以上、宅地建物取引主任者としての資格を有する者を専属的に配置しなければなりません。

現在のところ、社会保険の加入履歴などで常勤性の確認まではしていないためか、この専属性が守られていないと思われるケースがあるそうですが、実際この点で処分を受ける宅建業者が毎年のように都道府県庁のホームページで公表されておりますので、ルールを守った営業を心がけることが大切です。

専任の取引主任者は、他社で勤務することはできず、昼間はサラリーマンとして働いて夜だけインターネットで取引する業態であったとしても専従性は認められません。

また、事務所に通勤できる程度の距離に居住している必要がありますので、引っ越しをしている場合には取引主任者証の書き換えを行ってから宅建業免許申請を行う必要があります。主任者証の書き換えは意外と時間がかかりますのでご注意ください。

また、主任者証の有効期間が残っていることも確認しましょう。更新の手続きは早めにとるのがおすすめです。

代表者及び政令2条の2で定める使用人は原則常勤

代表者・代表取締役は、事務所に常勤する必要がありますが、他社で役員を兼任している場合等の理由で常勤できない場合は、政令2条の2で定める使用人を定めなければなりません。

また、政令2条の2で定める使用人は宅建業を行う各支店にも配置しなければなりません。

代表者・法人の役員・政令2条の2で定める使用人・専任の宅地建物取引主任者の欠格要件該当の有無

代表者・法人の役員(取締役・執行役・相談役・顧問)・政令2条の2の使用人・専任の宅建主任者が「欠格事由」に該当する場合は許可を受けることはできません。

以下の欠格事由に該当する者は5年間、宅地建物取引業免許を受けることができません。

  • 免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分違反をして免許を取り消された場合。
  • 免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分違反をした疑いがあるとして聴聞の公示をされた後、廃業等の届出を行った場合。
  • 禁固以上の刑又は宅地建物取引業法違反等により罰金の刑に処せられた場合。
  • ・免許申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をした場合。

以下の欠格事由に該当する人は宅地建物取引業免許を受けることができません。

  • 成年被後見人、被保佐人又は破産手続きの開始決定を受けている場合。
  • 宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな場合。
  • 暴力団の構成員である場合など